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金融日記:公的資金による資本注入って何? −庶民のための経済学講座−

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こんにちは。
藤沢Kazuです。

ところでつい先日、よんどころなき事情により庶民数人と会食をする機会があったのですが、そこで僕は世間を騒がしている外資系投資銀行の社員と言うことで庶民からいろいろとお叱りを受けることになってしまいました。

「投資銀行って庶民からもうかる投資話とか言ってたくさんお金を集めて投資に失敗してたいへんなことになってるんでしょ?」
「それで私たちのお金全部すっちゃってつぶれそうだから税金で助けてもらってるんでしょ?」
「そうそう公的資金の注入ってやつ」
「なんでそんな大損こいた銀行に私たちの税金をあげなければいけないの?」

と言うようなことを言われたのですが全くもって分かっていませんね。
大学を卒業して社会人を数年やっていても、まあー、この程度の理解と言うか誤解ですよ。
おそらく世間の理解ってだいたいこんなものでしょうか?

ひとことで言えば「外資系投資銀行は世界中の庶民からたくさんお金を集めて、それを運用して大失敗して、庶民の税金で助けてもらっている。それにもかかわらず経営者や一部の社員はつい最近まで庶民には想像もつかないような報酬をもらっていた」と言ったところでしょう。

それにしても大衆の無知さにはいつもあきれてしまいますね。

まず、最初の大きな誤解を解くと、投資銀行と言うのは庶民からお金を預かってそのお金を運用していません。
多分、投資信託のこととごちゃごちゃになっていると思うのですが、投資信託を運用しているのは資産運用会社です。
そして、どこの国でも無知な庶民からお金を預かって運用すると言う業務は非常に厳しく規制されています。
具体的には倒産隔離と言って、投資信託を運用している会社や、投資信託を販売している会社や、投資信託の資産を保管・管理している会社が経営に失敗して倒産しても、庶民の財産である投資信託は何の影響も受けないことになっています。

たとえば投資信託を運用する会社は日本だと野村アセットマネジメントだとかアメリカだとフィデリティとかです。
それで、そう言う投資信託を販売しているのが庶民に直接窓口を開いている野村證券とか三菱UFJ銀行とかです。
そして、庶民の財産が入っている投資信託を実際に保管しているのが中央三井信託銀行とかです。

投資信託の中に入っている個人の財産は厳格に分別管理されているので、これらのどの会社がつぶれてもいちおう何の影響も受けないことになっています。
(まあ、本当につぶれたら、そのときにはオペレーションがぼろぼろになっているでしょうから、なかなか自分のお金が返ってこなかったりとかいろいろ困るでしょうけど・・・)

世間を騒がせた、リーマンブラザーズとかモルガンスタンレーとかゴールドマンサックスとかは野村證券と同じ証券会社なので、直接は投資信託の運用とは関係ありませんし、あったとしても販売等の業務になるでしょう。
しかし、こう言う世界の投資銀行は個人業務を全く行っていないので、そう言う意味でも個人の投資信託とは関係がありません。

投資信託のファンドマネジャーが株とか債券とかを売買する時に、こう言った世界の証券会社(=投資銀行)を使うので手数料収入と言う点に関しては、まあ、庶民の投資信託に多少お世話になっていますけどね。


さて、それでは販売手数料とか稼いでるだけならどうしてあんなにめちゃくちゃな損失を出しているのでしょうか?
それは、世界の証券会社のビジネスモデルがこの10年ぐらいの間にぜんぜん変わってしまっているからです。
リーマンブラザーズとかモルガンスタンレーとかゴールドマンサックスとかは、ちまちまファンドマネジャーとか接待してしょっぼい手数料収入を稼いだりすることに嫌気がさして、自分の会社の自己資金で相場を張ることにしたのです。
実際、このような自己資金を使った投資やトレーディングは2007年の夏から始まった金融危機の前ぐらいまではめちゃくちゃもうかっていたわけです。

それでどんどん調子に乗ってめちゃくちゃ借金してどんどんでかいポジションで相場を張るようになったのです。
まあ、個人で言えば信用取引というやつです。
ところがこれが大失敗して大損失が出てしまったのです。
さらに悪いことに世界の投資銀行は個性がありそうで実は意外とみんな同じようなポジションだったので、いっせいに損切りをはじめたりして横並びでどの投資銀行もいっぺんに大損をぶっこいたのです。
個人で言えば、信用全開二階建ての銘柄が一週間続けてストップ安する感じです。

で、何が言いたかったかと言うと、投資銀行は庶民から直接何のお金も預かってないし大損ぶっこいたのは自分のお金である自己資金だということです。

さて、それでなんで公的資金による資本注入かと言うのを説明したいのですが、当たり前ですが、公的資金の資本注入とは税金をただであげることではありません。
具体的には、政府や中央銀行が税金でつぶれそうな金融機関の株を買うことです。
株を買うと言っても市場で買うわけではなくて、増資を引き受けると言うかたちで金融機関に直接に現金が入るようになります。

ここで増資とか資本とかを簡単に説明しないと、庶民にはチンプンカンプンでしょう。
まず、バランスシートと言うのを説明しましょう。
会社と言うのはオフィスを借りて従業員を雇っていろんな設備を買って商品を作ってそれを売ってお金を稼ぐわけです。
そこで会社は元手がいるのですが、これは創業者とか投資家が将来の利益をもらう約束で会社にお金を入れるわけです。
これが株と言うやつで、バランスシートの右下の資本であります。

また、ある程度まともな会社なら銀行から借金してお金を調達することができるかも知れません。
銀行から借りたお金はもうかろうが損しようが、利子をつけて返さないといけません。
これがバランスシートの右上の負債であります。

それでこの資本と負債を足したのが資産です。
資産と言うのは、外資系等銀行だといろんな債券だとか株だとかデリバティブ商品になってるわけです。
つまり、バランスシートと言うのは右側にどういう風に資金を調達したかが書いてあって、その資金でいったい何を買ったのかが左側に書いてあるんですよ。

そんで、外資系投資銀行のバランスシートはどうなってたかと言うと、たとえばつぶれる前のリーマンブラザーズなんか資産がなんと60兆円もあったわけですよ。
日本国政府の国家予算なみですね(笑い)。
しかも、60兆円のなかで自己資本は2兆円ぐらいで、58兆円ぐらいは借金だったわけですよ。
すごいですねー。

そんな状況で、左側の資産が暴落したらどうなるのでしょうか?
つまり、資産を全部売っても、資本が全部ふっとんでその上で借金がぜんぜん返せない状態。
マンガで言えば北斗の拳の「お前はもう死んでいる」と言う奴ですよ。
専門用語で言うと債務超過。

そして、リーマンブラザーズはアメリカのポールソン財務長官がゴールドマンサックス出身だったからなのかどうか知りませんが、放置プレイされることになって、本当にあっさりとつぶれてしまったのです。
この辺の放置プレイはさすが自己責任のアメリカだと思ったんですよ。

そしたら、大変なことになってしまったのですよ。
まず、リーマンブラザーズに貸した金が返ってこないし、いろんなデリバティブ取引でリーマンブラザーズが相手の契約が全部ぶっ飛んでしまうしで、とにかく大変なことになってしまったんですよ。

どういうところがリーマンブラザーズにお金を貸してたかと言うと、日本の地方銀行とかが庶民から集めたお金を貸してたりしたわけですよ。
だって世界中の天才が集まってトレーディングとかしてるすごい会社だからさー、つぶれるわけないし、実際どんどんもうけてたわけだからついついお金貸したくなるでしょ。
日本国債買ってるだけだったら誰でも出来るわけだから、地銀の経営者としては俺は他のやつらとはちがうみたいなところをみせてかっこつけたかったわけ。

そして、AIGなんかも連鎖倒産しかかったりしたんですよ。

それで、ちょっとよく調べてみたら北斗の拳で言うところの「お前はもう死んでいる」と言う金融機関ばっかだったわけです。
どこもリーマンブラザーズみたいにめちゃくちゃ借金して同じようなことをやっていたわけだからね。

だからつぶれないように資本を厚くしないといけないわけなんだけど、そのためには増資というのをする必要がある。
増資というのは株を新たに発行してその株を誰かに買ってもらうこと。
そうするとバランスシートの右下が厚くなるから、資産が多少痛んでも生き残ることができる。

でも、つぶれそうな投資銀行の株なんていったい誰が買うの?
いやー、実際に買っちゃった奇特な人々がいたんだよね、一昔前に。
アラブの王様とか、今流行の某国の政府系ファンドとか。
で、こういう増資を引き受けた人たちはめちゃくちゃ大損しちゃったわけね。
それで、リーマンブラザーズがつぶれた後は、他の投資銀行もみんなやばいことが分かっちゃったから、誰も増資なんて引き受けてくれないわけ。

じゃー、誰が引き受けるかと言ったら、もう、国しかないでしょ?
税金で引き受けるわけですよ。
だって、誰もつぶれそうな会社の株なんて買ってくれないからしょうがないじゃん。
かと言って、金融システム全体への影響が大きすぎてつぶすわけにもいかない。
だって、金融システムが崩壊したら、困るのは庶民だよ。
住宅ローンだって組めなくなるし、車買うのだってローン組めないしさー。

これが公的資金による資本注入ってやつ。

これで庶民のみなさんも分かってくれたかなー?

こうやって庶民のお金がめぐりめぐって外資系投資銀行に入っていたわけですよ。
そして、今は庶民のお金で救済してもらっているわけ♪

公的資金による資本注入をじゃんじゃんしているのはアメリカ政府だけど、そのお金だって日本の庶民の貯金と税金でたくさん買ったアメリカ国債が資金源なんだから、このブログを読んでいる庶民のみなさんも十分誇りを持っていいと思う。
金融システム崩壊を防ぐのに貢献しているってね♪


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