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植草一秀の『知られざる真実』: 彼(敵)を知らざれば一戦も殆(あや)うし

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彼(敵)を知らざれば一戦も殆(あや)うし

民主党の野田佳彦氏が代表選出馬を見送った。代表選出馬に必要な20名の推薦人確保が難しくなったためだと報じられている。私は本ブログで小沢一郎氏を無投票で再選すべきと主張してきた。その流れが確定的になったことを喜ばしく思う。

多数の民主党関係者が本ブログを閲覧してくれていることを知った。一人の市民の見解として受け止めていただいていることに感謝の意を表する。

決戦は次期総選挙である。私が小沢氏の無投票三選を求めているのは、ひとえに日本の政治を「利権集団のために存在する政治」から「一般国民のために存在する政治」に転換させるためである。

小泉政権以降の自公政権は、「弱肉強食奨励」、「官僚利権温存」、「対米隷属外交」を基本路線として政治権力を濫用してきた。警察、検察権力だけでなく裁判所権力をも支配下に置き、マスメディアを完全にコントロールして独裁的な権力濫用を続けてきた。

四権を支配する専制的な政治手法により、日本の民主主義は重大な危機に直面している。言論人と呼ばれる人々の大半が権力の走狗になり下がった。権力に屈しない人物にはおぞましい手段による不当な弾圧が加えられたと考えられる。

「改革」の美名の下に国民の生存権保障に不可欠なセーフティーネットが次々に破壊されてきた。その一方で、官僚利権は完璧に温存され、自民党清和会(町村派)が基盤を置く財務省、警察・検察勢力は、権力をさらに増強した。

「改革」の名の下に実行されたのは「利益供与」と「セーフティーネット破壊」だけだ。郵政民営化、道路公団民営化、住宅金融公庫廃止は「利益供与」政策である。貴重な国民資産が特定の利権集団に破格の条件で提供されたのだ。住宅金融公庫廃止は銀行業界に対する利益供与以外の何者でもない。

一方で、高齢者、障害者、母子世帯、低所得者などに対するセーフティーネットが次々に破壊されてきた。一般労働者も雇用条件悪化を推進する労働行政、増税、社会保険料負担増加、などの苛政に苦しめられてきた。人々は「改革」の言葉の響きに騙されてきたのだ。

政治屋・特権官僚・大資本・外国資本・電波が癒着して利権を欲しいままに独占する「利権互助会の構造」=「政官業外電=悪徳のペンタゴンの基本構造」により、一般国民は悲惨な状況に追い込まれた。 

自公政権は公的年金と医療保険という根源的なセーフティーネットの重要性を無視してきた。一般国民の生活の安定=幸福の実現など自公政権の眼中になかったのだ。

自公政権は高齢者、障害者、生活困窮者など、政府が真っ先に手を差し伸べるべき対象に冷酷無比な対応を示し続けた。自公政権は一般国民の生活の基盤である雇用の安定を破壊する方向に労働行政の舵を切った。

非正規雇用者が溢れ、一生懸命に汗水たらして働いても年収が200万円に届かない勤労者が大量に生み出された。その多くが若年労働者だ。彼らが将来を絶望し、自暴自棄に走るとすれば、その責任の一端が政府にあることは明白だ。

小泉政権は金融市場の制度的な歪みを活用し、不法行為の境界線上を泳ぐことによって巨万の富を手中にする者を成功者として絶賛し、「がんばった人が報われる」理想的な社会だと喧伝した。国民が「勝ち組」と「負け組」に二分され、「勝ち組」が利益を独占して「負け組」の不幸を嘲る(あざける)風土を生み出したのは小泉政権である。

「官僚主権」による「利権互助会のための政治」を「国民主権」による「一般国民を幸福にする政治」に変えなければならない。そのための決戦の場が次期総選挙なのだ。政治を刷新するには「政権交代」が不可欠である。次期総選挙で、「利権互助会の幸福を目指す政治体制=自公政権」を退場させ、「一般国民の幸福実現を目指す新しい政権」を樹立しなければならない。

次期総選挙での政権交代が実現しなければ、政治を刷新する機会は半永久的に消滅してしまう危険がある。小沢一郎氏の「次期総選挙が最大で最後のチャンス」の表現は政治のリアリズムに裏打ちされている。

私は2006年4月7日に小沢一郎氏が民主党代表に選出された時点から、一縷の希望を持って今日を展望してきた。「直言」サイトに私は、「日本の政治に一筋の黎明が見えた」(2006年4月11日)、「民主党が提示すべき三つの主張」(2006年4月26日)の二つの文章を発表した。当時の見解と現在の見解に基本的な変更点はない。

自公政権は前原前執行部下の民主党と「馴れ合い政治」を維持することを強く望んでいた。表面で対立を装いながらテーブルの下で手を握る「新55年体制」を維持しようと望んでいたのだ。

偽メール問題で前原氏が失脚し、小沢氏が党首として登場したのが大誤算だった。民主党の菅直人元代表は自公政権との癒着政治を絶対に受け入れない人物である。小沢−鳩山−菅のトロイカ体制は自公政権にとっての最大の脅威になった。

爾来、自公政権は小沢一郎氏の失脚を画策し続けてきた。①大連立騒動、②日銀総裁人事問題、③民主党代表選、のいずれもが小沢氏の求心力低下を目的に画策されてきたことは間違いない。微力ながら私も自公政権の謀略を成功させないために行動した。

御用言論人代表の田原総一郎氏が、「サンデープロジェクト」や各種寄稿を通じて小沢氏の影響力低下を目的とするさまざまな演出に痛々しい尽力を示し続けてきたことは、これまでの事実経過を一覧すれば明白である。

小沢氏が求心力を維持して「決戦の総選挙」に臨まなければ、政権交代の「大事」は実現しない。もちろん、政権交代は「国民の幸福を目指す政治」を実現するための出発点であって到着点ではない。政権交代を実現させる有権者が妥協を許さぬ監視を維持することで「最終目標」が成就される。

その意味で道のりは決して平坦でなく、かつ長い。しかし、強い「意志」が無ければ「大事」は「成就」しない。

「志有る者は事竟(ことつい)に成る」(後漢書)

また、

「彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず」

である。

自公政権は小沢一郎氏に対するネガティブ・キャンペーンをマスメディア総動員で展開するために、民主党の複数候補による代表選挙をけしかけてきた。

「パタリ」のbsan3さんが指摘
するように、マスメディアは連立与党のひとつである公明党で太田昭宏代表が9月23日の党大会で無投票再選されるのをなぜ批判しないのか。民主党が複数候補による代表選を実施しないことを社説まで動員して批判しておきながら、公明党については記事にもしないのは完全に公正さを欠いている。

福田首相は臨時国会を9月12日に召集する方針を示しているが、これは民主党が代表選を実施して9月下旬まで実質審議入りできないことを念頭に入れたものだったと考えられる。公明党の言いなりとの批判を和らげるための偽装と考えられるのだが、民主党代表選出が無投票になると9月中旬から審議入りになる。このなかで9月12日召集を貫けるのかどうか、注視が必要だ。

複数候補による民主党代表選を誘導しようとするなどの自公政権のすべての行動は、「政官業外電の利権互助会のための政治体制」=「自公政権」の利権を死守するための策略である。利権互助会の利権死守活動は民主党内部にまで触手が伸びている。敵の全貌、敵の戦略のすべてを掌握しなければ確実な勝利を得ることはできない。

勝利を手中に完全に収めるまで、片時も油断は許されない。

植草一秀の『知られざる真実』: 彼(敵)を知らざれば一戦も殆(あや)うし

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