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田中宇の国際ニュース

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田中宇の国際ニュース解説 2008年11月28日 http://tanakanews.com/


●「田中宇の国際ニュース解説」が『まぐまぐ大賞2008』のノミネートされました。
大賞・各賞は、読者からの投票で決定されます。以下のサイトから、ぜひご投票を
お願いいたします。【ニュース・情報源部門】の一番下です。
http://www.mag2.com/events/mag2year/2008/

●12月12日(金)に講演します。
http://www.business-cafe.com/weblog/

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★米金融界が米国をつぶす
━━━━━━━━━━━━━

 世界最大の金融機関だったシティグループが破綻に瀕したが、米政府がシテ
ィに対し、3060億ドルの不良債権に債務保証を与えるとともに、270億
ドルの資本注入を行うと決めたことで、シティはとりあえず破綻を免れた。
http://www.ft.com/cms/s/0/447938ee-b9f0-11dd-8c07-0000779fd18c.html

 米政府のシティ救済策は、シティにとって素晴らしい内容である半面、米国
民には巨大な負担となる。米国民(政府)が、3000億ドル以上の与信枠を
与えた見返りに、シティから得たものは、年間8%の利回りをもらえるとはい
え、270億ドル分の優先株式だけである。シティは、とりあえず破綻を免れ
ているが、いずれ再び危機的な状況に陥ってつぶれるかもしれない。最悪の場
合、米政府(米国民)は3000億ドル前後の損失を被る。
http://georgewashington2.blogspot.com/2008/11/citi-deal-is-lousy-for-america.html

 米国では今、失業の増加と、株価や住宅価格の続落の影響で、クレジットカ
ードのローン破産が増えている。昨年まで5%前後で推移していたカード債務
返済の延滞率は、倍増して10%に近づいている。日本の感覚からすると驚く
べきことだが、米国のカード保有者の10人に一人は、ローンを予定どおり返
せなくなっている。
http://www.time.com/time/business/article/0,8599,1859224,00.html

 シティグループは米国を中心に、1億8500万枚のクレジットカードを世
界で発行している。これらの発行済みカードが生んだローン債権の中の不良債
権(90日以上の延滞債権)は、1年間に67%の急増となっている。米金融
界全体に共通することだが、シティグループの不良債権は今後さらに増えるこ
とが確実だ。
http://meltdown101.livejournal.com/17389.html

 米政府は、シティ救済の直後には、フレディマックとファニーメイという政
府系住宅金融機関2社の救済などのために、新たに8000億ドルの救済枠を
作ることを決めた。シティ救済前に約7兆4千億ドルだった政府の金融救済枠
の総額は、1週間ほどの間に8兆5千億ドルにまで急増した。いずれ米政府は
財政破綻し、ドルの価値が下がって、米国はハイパーインフレになると予測さ
れている。
http://www.ft.com/cms/s/0/e7411216-bafb-11dd-bc6c-0000779fd18c.html
http://www.prisonplanet.com/cost-of-bailout-hits-85-trillion.html
http://bloomberg.com/apps/news?pid=20601109&sid=arEE1iClqDrk

▼金融機関の共食いを容認する米当局

 これだけの話でも、すでに米政府は十分に自滅的だが、11月25日のウォ
ールストリート・ジャーナル(WSJ)には、もっと破壊的な話が載った。そ
もそもシティグループの株価が急落して破綻しかけたのは、同業他社の金融機
関がよってたかってシティのCDS(債権の保険)の料率をつり上げて見かけ
上の倒産確率を引き上げ、その上でシティの株を空売りするという、シティを
潰して儲けようとする行為を行ったからだと、記事は指摘している。

 WSJの記事が直接検証したのは、シティより2カ月前に同様の手口で潰さ
れかけたモルガンスタンレーのケースである。WSJが「Anatomy of the Morgan
Stanley Panic」(モルガンスタンレー危機の解析)という記事で報じたとこ
ろによると、08年9月15日のリーマン破綻の2日後、リーマンと同業の投
資銀行であるモルガンスタンレーの株価が急落し、倒産確率を示すCDSの保
険料も高騰し「次はモルガンスタンレーが破綻しそうだ」という状況が市場で
醸成されたが、これは投機的な策略の結果だった。
http://online.wsj.com/article_email/SB122748970896452051-lMyQjAxMDI4MjI3NDQyODQ5Wj.html

 メリルリンチ、シティグループ、ドイツ銀行、UBS(スイス)、カナダ・
ロイヤル銀行など、米欧のいくつかの銀行やヘッジファンドは、モルガンスタ
ンレーのCDSを意図的に高い価格で売買して料率をつり上げて、倒産確率が
上がっているように見せかけるとともに、モルガンスタンレー株を空売りして
おき、株の急落で儲けたと、記事は指摘している。モルガンスタンレーのCDS
料率の上昇を見た多くの投資家が、同行の株を投げ売りしたが、破綻には至ら
なかった。

 そしてWSJの記事によると、同じ手口はベアースターンズ(今年3月)や、
リーマンブラザーズが破綻する直前にも行われ、2行を破綻に至らしめた。そ
して最近では、シティグループに対しても同様の手口が行われたと、記事は書
いている。シティは、モルガンスタンレーの時には加害者だったが、2カ月後
には被害者となった。

 この記事を読んで私が考えたのは、こうした金融機関どうしの共食い状態に、
米当局はどう対処したのかということだ。財務省や連銀、証券取引委員会など
が、この事態を知らなかったはずはない。日本なら、ある金融機関が他社の株
を空売りして、他社を潰してでも儲けようとしたら、すぐに当局がその動きを
察知してやめさせるはずだ。

 かりに、08年3月のベアースターンズ破綻時に、米当局がCDSつり上げ
と株空売りの策略に気づかなかったとしても、その後の調査では気づくはずで、
9月のリーマン破綻やモルガンスタンレー危機が繰り返されるのは全く奇妙だ。
私が考えざるを得なかったことは「米当局は、ベアスターンズやリーマンが金
融機関の共食いによって潰されることを容認した」という見方である。

▼銀行界の中枢が銀行界を壊している

 日本では、金融機関より金融当局の方が地位が上で、民間銀行は日銀や金融
監督庁に土下座している。だが米国は逆で、民間銀行が連銀や財務省を動かし
ている。19世紀末、JPモルガンなどニューヨークの大銀行家たちが、財政
破綻した米政府に金を貸して救ってやって以来、現在まで、米財務省は銀行家
の意に反したことをやらない。第二次大戦前はJPモルガン、戦後はロックフ
ェラー財閥、そして冷戦後はゴールドマンサックスが、米政府の経済政策を立
案する黒幕である。

 06年からは、ゴールドマンサックスの会長だったポールソンが財務長官に
なり、米政府を直接に指揮している。20世紀初頭に作られた連銀(連邦準備
制度)も同様に、ニューヨークの銀行家たちの主導で創設され、現在に至るま
で事実上、ニューヨークの大手銀行の代理人どうしが談合して金融政策を決め
る場所である。このような米国の状況からいえるのは、ニューヨークの大銀行
が談合して決めたことは、連銀も財務省も異議を唱えず黙認するということだ。

「しかし、モルガンスタンレーを潰そうとした連中には、ドイツやカナダの銀
行が含まれており、ニューヨークの大銀行の談合では説明がつかない」と読者
は思うかもしれないが、それは話の半分しか見ていない。ドイツやカナダやス
イスの銀行が「犯人」に含まれているのは、彼らを儲け話で誘い込むことによ
って、この件についての欧州からの非難を予防し、ニューヨークの大資本家が
米国の金融破綻を誘発していることを隠すためだろう。外国の銀行が首謀者だ
としたら、米連銀を黙認させて米銀行を潰すことは不可能だ。

 この犯行の黒幕はおそらく、米中枢をも握っているゴールドマンサックスや
JPモルガン・チェースなど、ニューヨーク資本家の中枢にいる勢力だろう。
それ以外に、こんな犯行ができる勢力はいない。彼らは直接犯行に加わらず、
シティグループや欧州カナダ勢に「儲かるから」といって空売りやCDSつり
上げを勧めたと考えられる。CDSは公設市場が存在せず、電話と電子メール
による相対取引だけなので、料率つり上げを犯罪として立件することは不可能
だ。万が一、立件されても、誘われた側のシティや欧州カナダ勢が捜査される
だけで、黒幕は暴かれず、銀行潰しの本質的な目的も暴露されない。

▼来年はドル崩壊と金高騰?

 著名な米国人投資家であるジム・ロジャーズは11月25日に「米政府はド
ルを下落させようとしている。ドルは来年にかけての時期は持つだろうが、そ
の後は急落し、国際備蓄通貨としての地位を失う。私はドルを売って円を買う」
という主旨の発言をしている。ドル急落は、米政府の意志だとロジャーズは言
っている。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=aP5uFzsclsDQ

 米連銀や財務省は、昨年夏に金融危機が始まった時から、未必の故意と疑わ
れる失策を繰り返し、リーマン破綻後は、財政赤字を不必要に急拡大している。
ドル急落は、米政府の意志である。話を広げると、ブッシュ政権は政治軍事面
でも、イラクやアフガニスタンの占領を非常に稚拙に展開し、未必の故意的に
大失敗させている。政治面でも経済面でも、意図的な覇権の崩壊が誘発されて
いる。

 私は以前から、この動きを「世界を多極化し、長期的な世界の経済成長を加
速する目的で、米国民や、米政界で強い力を持つ軍産複合体の目をだましなが
ら、隠れ多極主義の戦略が展開されている」と分析している。G20サミット
など、世界の多極化を象徴する会議も開かれ、あとは実際の、米国債の売れ行
きの悪化やドル急落などが起きるのを待つばかりとなっている。FT紙も、財
政赤字の急増でドルが下落しそうだと書いている。
http://www.ft.com/cms/s/0/9790f1ba-bbe0-11dd-80e9-0000779fd18c.html

 11月25日のWSJに載った、香港在住の投資家が書いた分析記事「連銀
の弾切れ」(The Fed Is Out of Ammunition)は、米国の金融危機は、いずれ
ドルの通貨制度を崩壊させるが、そのきっかけは、外国人投資家がドルを信用
しなくなり、ドルを売って金地金を買う動きを加速させ、金相場が高騰するこ
とだろうと予測している。そして、ドル崩壊と金高騰が起きた後には、金本位
制が見直され、再検討されることになるという。金本位制復活論は、もはや嘲
りの対象ではない。最近は毎日のように、この手の驚くべき話が、米英の新聞
に掲載される。
http://online.wsj.com/article_email/SB122748912533552007-lMyQjAxMDI4MjI3NDQyODQ5Wj.html

 シティグループ自身、11月27日には「金相場は来年末までに1オンス
2000ドル以上まで急騰する」という予測を発表した。現時点の金価格は約
800ドルなので、2倍以上だ。以前に書いた「操作される金相場」で指摘し
た、金を下落させている金融機関の空売りが、そろそろ終わりに近づいている。
上記のWSJの記事やロジャーズの話と合わせて考えると、来年には、金が高
騰してドルが崩壊しそうだ。
http://tanakanews.com/081107gold.htm
http://www.telegraph.co.uk/finance/comment/ambroseevans_pritchard/3526645/Citigroup-says-gold-could-rise-above-2000-next-year-as-world-unravels.html

 米国は景気も大崩壊しており、世界的な不況になる。来年は「この世の終わ
り」に似た事態になりうる。中東での戦争もあり得る。最近では、ブッシュ政
権が訪米したイスラエルの首相に「イランを空爆するなら、ブッシュの任期が
終わってオバマが大統領になった後(来年1月20日以降)にしてくれ」と伝
えたという話も出ている。オバマ当選の直前、バイデン副大統領候補やパウエ
ル元国務長官が「オバマが大統領になったら、就任後半年以内(もしくは就任
翌日)に、国際的な危機が発生する」と言っていた、という話も思い起こされる。
http://tanakanews.com/081028mideast.htm
http://news.antiwar.com/2008/11/24/report-us-asked-israel-not-to-start-any-major-wars-until-obama-takes-office/

▼裏で公金処理されたリーマンCDS

 米金融当局はCDSをめぐっても、財政破綻につながる公金の浪費(もしく
は詐取)をしている。私は以前に「CDSで加速する金融崩壊」という記事を
書き、破綻したリーマンブラザーズのCDSの清算時に、いくつかの金融機関
が合計3000億ドル前後の巨額の支払いを義務づけられるのではないか、と
書いた。
http://tanakanews.com/081010CDS.htm

 実際には、リーマン関連のCDSでは、総額60億ドルの支払い義務しか発
生しなかったと、とりまとめ役となった組織(DTCC)は発表した。しかし、
フランスの大手銀行BNPパリバの幹部は、どうみても支払総額は2200億
から2700億ドルはあったはずだと言っている。
http://www.telegraph.co.uk/finance/comment/ambroseevans_pritchard/3211647/Fears-of-Lehmans-CDS-derivatives-haunt-markets.html

 不可解だと思いつつ、しばらくウォッチを続けていると、11月になって
「ニューヨーク連銀が、破綻した大手保険会社AIGを救済するという名目で
AIGに入れた資金の一部は、AIGが引き受け、ゴールドマンサックスなど
の米欧の金融機関が保有していた、リーマンなどが発行した債権にかけられて
いたCDSの保険契約を清算するために使われ、資金はゴールドマンサックス
などに支払われた」という指摘が出てきた。
http://www.gata.org/node/6864

 保険会社であるAIGは、保険の一種であるCDSを巨額に引き受けており、
その中にはリーマン関連の債権に対するCDSもあった。それらの債権自体は、
ゴールドマンなどが所有していた。リーマン破綻によって、ゴールドマンなど
はAIGから保険金(清算金)を受け取る権利を持ったが、AIGが破綻する
と、CDSの保険契約自体が無効になり、支払いを受けられない。ゴールドマ
ン出身のポールソンは、公金を投入してAIGの倒産を防ぎ、AIGの株式の
8割を米政府が買収して経営権を乗っ取り、AIGに投入した公金を使って、
ゴールドマンなどが持っていたリーマン債権などに対するCDSを清算し、
損失の発生を回避した。
http://www.nytimes.com/2008/11/11/business/economy/11aig.html

 こうした資金の動きを、米政府は発表していない。裏側でAIGを経由した
公金が使われたため、リーマン破綻にともなうCDSの表向きの清算額が小さ
くなったと考えられる。米当局はあちこちに巨額の不透明な公金投入をしたか
ら、AIG経由以外にも裏側の経路が作られ、ゴールドマンなどがかけていた
CDSが公金で清算された可能性がある。

 AIGには、総額1500億ドルの公金が投入された。そのうちわかってい
るだけで350億ドルが、ゴールドマンのほか、メリルリンチ、ドイツ銀行、
UBSなどに、CDSの保険金として支払われた。ここでもドイツやスイスの
銀行を仲間に入れることで、本質を見えにくくする仕掛けが作られている。

 リーマンのCDSが意外な少額で清算されたと発表されたとき、金融危機の
拡大を恐れる金融関係者らは喜んだが、これはぬか喜びだった。実は、CDS
は裏で公金で救済され、今後、米財政赤字の急拡大による財政破綻やドル崩壊
という、最悪の事態が逆襲してくるだろう。

 AIG救済策を主導したのは、ティモシー・ガイトナーが総裁をつとめてい
たニューヨーク連銀だった。ガイトナーはオバマ政権の財務長官になる。金融
機関を救う代わりに米財政を破綻させるやり方は、オバマ政権にそっくり継承
されそうである。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/081128bank.htm


★音声訳
http://www.voice-news.net/

@ふりめ

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