週刊金曜日: 金曜アンテナ |
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「事故米」問題は政府の責任
MA米輸入減と公的規制復活を
基準値を大きく超える残留農薬やカビ毒に汚染された「事故米」が酒・焼酎から菓子類、学校給食にまで流れ込んでしまった事件は、底が見えない広がりを見せている。このコメを輸入し、倉庫から出して市場に放出したのは農林水産省である。なぜこんなことが起こったのか。
事故米を農水省から工業用として安く買い取り、食用に転売した業者は何十倍もの利益を得た。「非食用」として別枠にされていたものが、長期にわたり、大量にこうした形で売られていたのを見抜けなかった農水省の責任は大きい。
日本ではすでに38年にわたり、コメが余っているからと減反を続けている。稲作農家に割り当てられる減反面積は地域によって異なるが、水田面積の30%から40%に及ぶ。稲作農家は3年に一度コメづくりを休まなければならない勘定だ。
その一方でミニマムアクセス米(MA米)という名前で年間77万トンものコメが輸入されている。MA米は国際的な自由貿易交渉の過程で、コメの完全自由化の代わりに日本政府が「輸入義務米」として受け入れたものだ。始まったのは1995年で、この年、日本のコメ消費量の4%に当たる40万トンを輸入、以後積み増して、現在は国内消費量の7・2%に当たる77万トンで固定されている。そのうち半分は米国産、残りが中国やベトナムからだ。
コメ余りの中での強制輸入なので、市場を圧迫してコメ価格の下落を招かないよう、政府はMA米を国内市場に出さない方針を打ち出した。そのため在庫が膨らみ、輸入代金とは別に11年間で2600億円もの経費がかかっている。これはすべて税金であり、政府は早く倉庫から出したいと常に考えている。
このMA米のうち、96年から2007年までに食品衛生法違反で「食用にしてはいけない」とされたコメが1万677トンある。工業用であれば市場を圧迫することにはならないということで、農水省は売り急いだ。これが今回の事故米流出の背景にある。
さらに、問題をここまで大きくしたもう一つの背景がある。今のコメの流通があまりにも複雑で、監督官庁の農水省もつかみきれていないという問題だ。
MA米の輸入が始まった1995年、政府はコメの国家管理を定めていた食糧管理法を廃止し、市場原理を大幅に取り入れた現行食糧法を制定した。さらに2004年から、小泉政権の下で「米改革」が実施され、残されていた規制も撤廃されて誰もがコメ取引に参入できるようになった。
こうして紙の上だけでコメをやり取りする「コメ転がし」業者が増殖、国民の生命にかかわる基本食糧であるコメが、単なる金儲けの手段に変わっていった。コメの流れが誰にもわからない時代になったのである。
いまやらなければならないことは二つ。一つは国民生活に必要のないMA米の輸入を減らすこと。東京大学大学院教授の鈴木宣弘さんは「MA米は輸入義務米ではなく、輸入機会の提供にすぎない」と述べている。もう一つは、野放し状態のコメ流通に公的な規制を復活すること。事は国民の生命にかかわることなのである。
(西沢江美子・ジャーナリスト)
都教委が漏洩事件の氏名公表拒否
理由は政治家の「権益を害する恐れ」
東京都教育委員会が都情報公開条例を恣意的に悪用し、教員採用と教育管理職昇任の選考結果漏洩事件の漏洩側職員と依頼者(政治家)の氏名公表を全面拒否した。
都教委部課長級職員8名が2006年度以降の選考結果を「正式発表の概ね1時間程度前」から、都議・国会議員・国会議員秘書に連絡していた情報漏洩に対し、「職員・政治家の氏名公表」を要求し拒否された都民が行なった、情報開示請求(8月8日号本欄で既報)に、都教委総務部教育政策室は9月上旬、全面拒否した通知文を送付し、黒塗りの調査用紙を示した。
都教委は開示拒否の理由として、(1)職員については「職員の所属、氏名及び回答内容を公表することとなると、同種の調査の際に、率直な意見が寄せられず、正確な状況を把握することができなくなるおそれがあり、適正な事務の遂行に支障をきたすおそれがあると認められるため」(根拠規定は都情報公開条例第7条第2号)、(2)政治家については「職員の所属、及び氏名を公にした場合、職員に問い合わせた者を特定することはできないが、この職員に対して合格発表前に問い合わせをしたという事実が明らかになり、職員に問い合わせをした者の権利利益を害するおそれがあるため」(根拠規定は都情報公開条例第7条第6号)と明示した。
これに対し都民は9月17日、「(1)で『同種の調査』というのは、権力者の言いなりの不正行為の再発を都教委が前提にしていることになり、再発防止への決意に欠けている。(2)は、都教委は『君が代』裁判では教員や子どもたちの個人の権利(人権)よりも公共の利益の方を優先させる主張をしているのに、今回は公人たる政治家個人の権利利益優先を主張してかばっており、矛盾」と反論し、異議申立書を提出した。都教委が再度開示を拒否した場合、この問題は都情報公開審査会にかけられることになる。
黒田浩利・都教委教育情報課長は「事前の合否連絡は不適切だが、不正でなく違法行為でもないと考えており懲戒処分にしない。ただ、木村孟教育委員長から当該の職員らに厳重注意した。7月24日、教育委員長名の都民の皆様へのお詫びのコメントも出した」と弁明した。
(永野厚男・教育ライター)
浜岡原発差止訴訟控訴審始まる
東京高裁の和解打診を中電拒否
東海地震で、中部電力浜岡原発(御前崎市)が被害を受けた場合、深刻な「原発震災」をもたらす危険性があるとして、中部電力に対し、周辺住民らが求めた一—4号機の運転差し止め訴訟。その控訴審が9月19日、東京高裁で始まった。曇天の下、200人を超える傍聴希望者が集まり、世間の関心の高さが窺えた。
富越和厚裁判長は、現在停止中の1、2号機については原告、被告双方に、「話し合いはできないか」と和解を打診。原告側は了承したが、中部電力側が「すり合わせをするつもりはない」と拒否した。だが、裁判長は、「今後も話し合いの機会を提案していく」と述べ、和解を勧める意向を示した。
2007年の新潟中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発の耐震想定の甘さが露呈したばかり。この日、原告側は、中越沖地震と柏崎刈羽原発事故の関係を基に、東海地震が発生した場合に浜岡原発で起こりうる事故の危険性を指摘。運転停止を訴えた。
中部電力側は、国の安全審査を満たしているとして、原告側が主張しているような「絶対的な安全を求めることは誤りであり、大きな地震モデルを想定することは、国の施策上避けなければならない」などと陳情し、控訴棄却を求めた。
1審・静岡地裁は原告の訴えを棄却。原告は「判決は地震大国日本において原発を設置・運転することがいかに危険であるかについて、あえて目をつぶった極めて不当なもの」とし、「中央防災会議(内閣府)が想定している最大の地震とそれに基づく安全審査の基準(原発の耐震設計と運用)が果たして適切なのか」と疑問を呈した。
どんなに科学技術が発達しようとも、人間が設計し、運用している以上「絶対的な安全」を保障することは不可能だ。しかし、原発事故がもたらす被害は計り知れない。だからこそ、「絶対的な安全」が確保できないならば、運転を停止すべきではないのか。想定外のことが起きない保障はないのである。
(ゆげたりえ・編集部)
道徳教育には大盤振舞
文科省が歪な概算要求
文科省が11日に報道発表した2009年度概算要求中の「新学習指導要領の円滑な実施に向けた支援策」は、特定の政治色の濃い施策にヒト・モノとも大盤振る舞いする反面、子どもたちのための条件整備は極端にケチっている。
対前年度比40億7600万円増の47億3400万円を計上した「道徳教育の充実」中の目玉、「道徳教育用教材の購入費の国庫補助制度創設、41億1800万円」は、「学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な教材(読み物資料等)が教科書に準じたものとして十分に活用されるよう」と明記。
これは上限が決まっている「定額補助」であり、1冊当たり約400円を超える分は、これまで通り、自治体か保護者の負担になる一方で、小中の新指導要領中「伝統と文化<中略>などを題材とし、児童・生徒が感動を覚えるような魅力的な教材の開発や活用」を求めている箇所で、文科省の『解説』が「国への誇り、愛情を感じさせるもの」の「効果的な活用」を主張していることから、「国を愛する態度」等、教材内容への縛りがかかってくる危険性がある。
また3億6700万円を計上し、改訂版を印刷・配布する『心のノート』は、7月の「心のノート改善事業に関する企画提案公募」の際、文科省は同省が設置した「『心のノート』改善に関する協力者会議」の意見を反映せよ、と縛りをかけている。この他、都道府県等教育委員会の指導主事等、中央220名、地区660名を対象に、「道徳教育指導者養成研修」を実施する費用も計上した。
一方、新指導要領の先行実施で授業数が大幅増となるのに、「教員が子ども一人一人に向き合う環境づくり」と称しながら、正規の教諭職増員は「主幹教諭が教頭(副校長)を補佐する等、マネジメント機能強化の仕事に時間を費やす穴埋め」分の「全国で896人」に留まり、残りは非常勤講師計1万1500人でまかなう、というケチケチぶり。
保護者・市民からは「選挙で国家主義教育反対の議員を増やし、マトモな予算案に組み替えを」という声が出ている。
(永野厚男・教育ライター)
「恫喝訴訟」の汚名高い
オリコン控訴審始まる
烏賀陽弘道氏が月刊誌『サイゾー』編集部からの電話取材に応じて答えたとされるオリコンチャートの信憑性を疑問視する発言が掲載されたことに対し、オリコンが事実無根の名誉毀損として烏賀陽氏を訴えた訴訟の控訴審が9月16日、東京高裁で始まった。今年4月の1審判決では烏賀陽氏にオリコンへの賠償金の支払を命じたため、烏賀陽氏が控訴したもの。閉廷後、烏賀陽氏と弁護団による控訴審説明会がもたれた。
飯田正剛弁護団長は、控訴審の主要な争点を説明。
第1の争点は、そもそも烏賀陽氏は『サイゾー』に掲載されたコメントのような発言はしておらず、言ってもいないことに責任が問われている、という点。1審では烏賀陽氏が本人証言で強調した以外、ほとんど争点にされなかったが、控訴審にあたり、烏賀陽氏に当時電話取材して記事にした当時の『サイゾー』編集長、副編集長に飯田弁護士と烏賀陽氏が会い、両者はそれらを認めている。
第2の争点は、「百歩譲って、仮に烏賀陽氏のコメント部分が言ったとおりだったとしても名誉毀損は成立しない」という点。この点に関しては言論の自由、評論の自由にかかわることであり、今回提出された「控訴理由書」でも詳しく述べられている。
続いて小川朗弁護士は「この訴訟は烏賀陽氏個人に対する嫌がらせ以外の何ものでもなく、恫喝訴訟という点について争う」と主張。さらに日隅一雄弁護士は「地裁ではオリコンの公人としての性格やコメントの責任範囲をハッキリさせていない。そのうえで烏賀陽氏に名誉毀損を断じた」と地裁判決を批判した。
烏賀陽氏は、「この訴訟は、ジャーナリストに対する攻撃というよりニュースソースに対する攻撃、情報源に対する攻撃と捉えるべき。取材源つぶしであり、憲法の根っこにかかわる問題だ」と指摘し、欧米では認められないSLAPP(恫喝訴訟)が日本では頻発し、日本の裁判所が欧米では「ありえない判決」を下していると強調した。
次回口頭弁論は、11月11日11時から820号法廷で行なわれる。
(本誌編集部)
4党共闘で自公政権の
打倒めざす那覇市長選
11月16日投票の那覇市長選挙で四野党に擁立された平良長政氏を支持する東京集会「平良さん勝利で自公政権に痛打を!」が13日、文京区民センターで行なわれた。
同集会を呼びかけたのは野党共闘を求める4つの市民団体が結成した「那覇市長選挙支援東京連絡会」。
総選挙を間近に控え、沖縄では野党(沖縄社会大衆党・民主党・共産党・社民党)の共闘体制が維持されている。集会には、元参議院議員で沖縄社会大衆党前委員長の島袋宗康氏が駆け付けた。
「4野党が統一しなければ、自公の候補に勝てない。他の政党がケンカしそうなところを、社大党が仲裁と根回しでまとめてきた」と島袋氏は、中央政党と系列化していない独自のローカル政党の野党共闘における役割を強調した。
逆にいえば「どの県でも野党共闘さえすれば勝てる」(島袋氏)ということだ。新社会党から出席した江原栄昭本部執行委員は「本土で数カ所でも護憲勢力による選挙協力が成功すれば展望がひらけるのでは」と語った。
沖縄社大党のような地域限定の強力な政治団体・市民団体を本土でもつくり、護憲民主勢力をつなぐ接着剤にしたい、という声も、集会参加者から聞かれた。
(林克明・ジャーナリスト)
国境を越えた連帯
反トヨタキャンペーン
フィリピントヨタ労組と同労組を支援する会が呼びかけた第3回反トヨタ世界キャンペーンが13日から実施されている。日本ではエド・クベロ同労組委員長とウェニー・ウルヘル副委員長を招いて14日、15日名古屋駅前と豊田市の本社で抗議と申し入れ行動、17日には東京総行動に集まる150名の労働者と共にトヨタ東京本社に対する抗議行動が行なわれた。
この争議は2000年にトヨタが同労組との団体交渉を拒否し、この紛争で翌年トヨタが233名を解雇したことを発端にしている。その後フィリピン最高裁が同労組の団体交渉権を認め、ILOが団体交渉の開始と233名の原職復帰を求める勧告を出したにかかわらず、トヨタはそれを拒否。争議は長期化している。
トヨタなどの多国籍企業とアロヨ政権は「NOユニオン!NOストライキ!」政策を推し進め、昨年以来フィリピントヨタでは工場内と組合事務所のそばに軍隊まで駐屯させている。さらに今年8月には軍によるエド委員長を政治的殺人の標的にした動きが始まった。この日本では信じがたい状況の中で同労組は闘い続けている。17日の集会でエド委員長は「たとえ私が殺されても労働者の団結はつぶせない!」と決意を述べた。
一連の抗議行動にはトヨタとトヨタの下請企業に作られている労働組合も参加。今トヨタの足元で国境を越えた労働者の連帯が始まっている。詳細は「支援する会」URL http://www.green.dti.ne.jp/protest_toyota/参照。
(吉田稔一・フィリピントヨタ労組を支援する会)
根津教諭、河原井教諭を
支援する集会開催
学校式典での「君が代」斉唱に不起立を続けることで、今年、東京都教育委員会から停職6カ月の処分を受けた根津公子教諭と河原井純子教諭を支援する集会が19日、東京都内で開かれた。議題は、都教委が7月15日に出した「分限事由に該当する可能性がある教職員に関する対応指針」(分限指針)。
不起立を貫く根津さんは今年3月に懲戒免職が予想されていたが、支援者との都教委への連日の要請行動がそれを回避させた。だが分限指針が出されると、支援者は「懲戒免職でなく分限免職でクビを切るかも」と恐れた。
分限指針は、「職務命令を拒否」「懲戒処分を受けても再び非違行為を行なう」「病気休暇の繰返し」など21項目に該当する教職員を降任や免職できることを定めた制度。不起立を繰り返したり、病気などの休暇が多かったりすれば免職できるとの内容だ。
根津さんは「つまり、不起立者だけでなく全教員が対象になるということです」と教育労働環境の悪化を懸念した。
町田教職員組合(町田市)の菊岡伸一委員長は「分限のない今も、都では新採用教員が4年連続自殺している。1年以内に退職に追い込まれる新採も今年はすでに100人超」と報告。つまり、分限導入はより多くの免職を生むということだ。だが、根津さんと河原井さんは諦めない。
「全教員対象だからこそ運動を広められます。食い止めていきます」と語ると、参加者80人から拍手が沸いた。
(樫田秀樹・ルポライター)
PAC3ミサイルの実射訓練をやめろ! 9・14防衛省行動
MD用迎撃ミサイルPAC3初の実弾による迎撃実験が米国ニューメキシコ州で15日からの週に実施されると報じられたため、ミサイル実射訓練に反対する13団体は14日、実射訓練中止とミサイル防衛(MD)からの撤退を要求する文書を防衛省に提出した。
北朝鮮や中国の弾道ミサイルが脅威だと日本政府・防衛省は宣伝し、MDを強行しようとしている。しかし、今回要請行動した団体のひとつ「核とミサイル防衛にNO!キャンペーン」の要請書によると、そもそもPAC3は北朝鮮や中国の弾道ミサイルを想定外にしている矛盾を批判している。その根拠として挙げられたのは、米国防情報センターの情報だ。同センターによると、1997年から2007年に行なわれたPAC3の29回の実験リストでは、PAC3が合格したとされるのは射程300〜500kmの短距離戦術ミサイルや航空機を想定したもので、MD必要性の根拠とされる北朝鮮や中国の弾道ミサイルは想定外ではないか、と市民団体は指摘している。
今回の実射訓練費用は23億円。ミサイル防衛総額で6兆円との試算もある。貧困層が拡大するなか、本来社会保障にあてるべき巨額の税金が軍備拡大に使われている。
(文・写真/林克明・ジャーナリスト)
国際短信
韓国
「脱北女性」は
「スパイ」だったのか
日本でも報道された、「脱北女性スパイ」の逮捕事件。「犯人」とされたウォン・ジョンファは、軍部内での北朝鮮に関する安保講演や中国での北朝鮮人との接触といった行動から逮捕にいたったとされる。だが、安保講演は韓国軍が公然と脱北者に依頼しているもの。脱北者は韓国で定着金600万ウォンと住居支援金1300万ウォンを国家から支給されるが、支給金が尽きた後は差別のため就職もままならない。そのため、20万ウォンほどの謝礼金を目当てに北朝鮮情報を軍などで講演する者は少なくない。また、韓国から北朝鮮の家族へ送金する際、中国に赴いて現地の北朝鮮人と接触して送金するケースが増えている。
もともとウォンは、軍の関連機関からの依頼で中国で北朝鮮人から情報を聞きだす「二重スパイ」だったことが判明。警察がウォンの捜査をはじめたのは05年5月で、わざと泳がせて、「容疑」を拡大しようとした痕跡が見え見えで、70年代から80年代にかけて軍事政権が乱造した「スパイ事件」が、また李政権になって再現したとの批判も出ている。
(李ソヨン・フリー記者)
マカオ
過熱するカジノ景気をめぐって
米中が互いに水面下で反目
カジノ景気に沸くマカオ。今年の年間成長率は20%前後と予測されている。そこで金を使っているのはほとんどが本土の中国人だが、隣接する広東省政府は今年に入り、マカオ入境に必要なビザの発給を制限している。狙いは、(1)カジノ依存による経済構造のゆがみの是正(2)地方の共産党幹部や政府高官による公金の散財・汚職の防止——だ。
しかも、並み居るカジノでもリゾートを併設している米国系のヴェネチアン・マカオが有名で、シェアも高い。このため香港紙の『明報』は北京の消息筋の話として、「中国人の血と汗で生んだ金を米国人が持ち去っている」と報道。さらに、早ければ10月から広東省政府がビザの発給回数を現在の2カ月に1回から半年に1回に改める——と8月にポルトガルの通信社が報じた(後に広東省政府は否定)。米証券市場では、カジノ運営会社の株が一時下がるなどの影響も出ており、カジノが米中関係悪化の火種となる恐れもある。
(志村宏忠・ジャーナリスト)
ロシア
同盟国との軍事関係強化に
米国が厚顔無恥な横やり
ロシア海軍が、冷戦後初めて地中海への進出を計画している。かつてソビエト海軍が使用していたシリアのタルトゥス港を再整備して使用するもの。これによってロシアは、地中海での拠点確保が可能になる。シリア側はロシアから新型地対空ミサイルの購入を予定しているほか、同国のアサド大統領は「安全保障を強化するためにはロシアとあらゆる協力をする」と発言。両国で懸案となっている、ロシアの核弾頭搭載可能な短距離ミサイル・イスカンダルの配置にも前向きの姿勢だ。
ロシアは8月のグルジア紛争による対米関係悪化に直面し、シリアのみならずあえて米国と対立する国々との軍事関係を強化する方針。イランには地対空ミサイルS300の売却が予定されているほか、ベネズエラにも装甲車や戦闘機などを売却中だ。
一方、米国のライス国務長官はこのほど、ロシアを「国外で攻撃的姿勢をますます強めている」などと批判した。だが8月の紛争は、米国に支えられたグルジアが南オセチアに侵攻したのが原因で、批判は的外れだ。
(編集部)
今週のジェンダー情報
【裁判】福井県男女共同参画審議会音声記録公開要求控訴審も棄却 9月22日
ジェンダー関連書籍が福井県の施設で一時撤去された問題を審議した県男女共同参画審議会の音声記録について、一時撤去された本の著者である上野千鶴子東京大学大学院教授らが公開を訴えていた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部(渡辺修明裁判長)は22 日、第1審判決を支持し、控訴を棄却した。原告側は上告する予定。
【戸籍】無戸籍の子どもが認知調停により戸籍取得 9月16日
最高裁判所が今年6月に「裁判手続きの案内」を改定し、認知調停申し立て方法の記載を追加したことから、民法772条の規定により無戸籍となった子どもや母親が、全国一斉に認知調停の申し立てを行なっていたが、16日までに、東京や兵庫、奈良、香川など各地で調停が成立し、前夫の協力を経ないで親子関係が確定していることがわかった。香川のケースでは10日に出生届を提出した。
これまで、前夫を巻き込まない認知調停はほとんど認められず、前夫を相手方とした「親子関係不存在確認」の調停をせざるを得なかったが、離婚した相手に協力を求めることが難しいことや、DV離婚では前夫に知られることを恐れ、手続きをしないまま子どもが無戸籍になるケースが少なくなかった。
【自治体】熊本市男女共同参画推進条例案継続審議 9月13日
熊本市議会の教育市民委員会は12日、9月定例会に提案されていた男女共同参画推進条例案を全会一致で継続審査とした。自民党を中心に「男らしさや女らしさの尊重を明記してほしい」などの要望が出たためという(『熊本日日新聞』9/13)。
同委員会では、満永寿博議員(自民)が、「条例制定を否定するつもりはない」とした上で「条例に男らしさ、女らしさや、ひな祭りなどの伝統行事を尊重する点を明記すべきだ。そうでなければ人間の“中性化”を目指すものと誤解される」とバックラッシュ派の典型的な意見を主張。これに対して「くまもと未来」、民主、社民系の「市民連合」、公明の各議員が同調したという(『同』)。
【国際】ルワンダ下院で女性議員過半数に 9月19日
アフリカ中部の国ルワンダで下院選挙(定数80)が行なわれ、女性議員が過半数を超える見込みであることが19日わかった(『共同通信』9/19)。女性が国会議員の過半数を占めるのは世界初。
同国下院は、これまでも女性議員の比率が世界最高の48.8%だったが、今回の選挙では、少なくとも55%に達するとみられている。
(協力/mネット・民法改正情報ネットワーク、現田正義)
今週の裁判予定
協力/NPJ
9月29日(月)
北海道警不当訴訟名誉毀損事件
13:30〜 札幌地裁 5号法廷
事件内容:道警の裏金に関する書籍について、元道警総務部長が、執筆した道新記者らに損害賠償を求めた訴訟に対し、共著者である大谷昭宏氏と宮崎学氏が、訴え自体が名誉毀損として提起した訴訟
期日裁判の内容:証人尋問
9月30日(火)
薬害イレッサ訴訟
10:30〜17:00 東京地裁 103号法廷
事件内容:肺ガン治療薬イレッサによる副作用死亡被害について、被害者遺族が国と販売会社に対し慰謝料を請求する訴訟
期日裁判の内容:証人尋問
10月1日(水)
法律守ってよ! 「すき家ユニオン」
17:00〜 東京都庁内審問室 ※傍聴希望者は、東京都庁第1本庁舎内34階申立人控え室に集合
事件内容:「すき家ユニオン」が会社に対して団体交渉を求めたが、会社は2007年2月から応じなくなった。そのため東京都労働委員会に対して、会社に是正命令を下すように救済手続きを求めた案件
期日調査の内容:双方からの最終意見陳述
10月3日(金)
ストップ!ザ八ッ場ダム〜誰のための公共事業?
13:30〜17:00 前橋地裁 21号法廷
事件内容:八ッ場(やんば)ダムに関係のある関東1都5県の住民がダム建設を阻止するため、各都県を相手に起こした訴訟
期日裁判の内容:証人尋問
詳細は http://www.news-pj.net/npj/npj-cal.html
投稿者 sfu9xi | 返信 (0) | トラックバック (0)